11月の米大統領選で欧州の安全保障への関与に消極的なトランプ前大統領が返り咲く可能性も念頭に、欧州の大国同士で連携します。英国防省の発表によりますと、英国のヒーリー国防相とドイツのピストリウス国防相が23日にロンドンで会談し、協定に署名します。英独間で初の防衛協定となります。空、陸、海、宇宙、サイバーのすべての領域で体系的に協力するといいます。

柱のひとつは長距離兵器の共同開発だ。英国がフランスと共同開発し、ウクライナに供与している空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」よりも長い距離を正確に飛ばせる兵器をめざします。戦闘機とともに飛ばすドローンや無人車両の開発にも取り組みます。

ドイツの防衛大手ラインメタルが英国に新工場を建て、2027年から大砲の部品を生産します。英国と大陸欧州をつなぐ海底ケーブルの保護でも協力します。

部隊間の連携も深める。エストニアとリトアニアに駐留する英軍と独軍が合同演習します。英海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を年内にドイツのハンブルクに派遣します。ドイツの対潜哨戒機は英北部スコットランドの英空軍基地を定期的に使います。

英シンクタンクの国際戦略研究所（IISS）の軍事情勢分析「ミリタリー・バランス」によりますと、23年の英国の軍事費は734億ドル（約11兆円）、ドイツは636億ドルでそれぞれ欧州1、2位でした。

欧州ではウクライナ侵略を続けるロシアの脅威が高まる。欧州の安全保障への米国の関与が薄まる事態に備えます。（nikkei.com）